催眠に掛かったらどうなるの? & 催眠状態への入り方(掛かり方)

● 催眠状態への入り方〜トランスへ

あなたが心の中で施術者(催眠誘導者)の誘導に”許可”を与えればいいだけです。特にこうしなければならない、という決まりごとはありません。
頑張る必要もありません。けれど客観的に誘導の言葉を聞いているのではなく、軽くイメージした方が気分よく催眠状態(トランス)へ入れる事が多いようです。催眠状態でも失神しているわけでも寝ているわけでもありませんし、誘導者が何を言っているかちゃんと聞こえています。また、催眠に入っている場合でも心身に危険が及ぶような暗示は入らないと言われているのは、例えて言えば、催眠状態では「無意識」が意識(理性)を上回り、「無意識」は根本的にはあなたを生き生きと活かすように働くものなので、”自己防衛”の力が十分に働くから、と言われています。また、意識を失った状態や、寝てしまうと催眠は掛かりません。寝てたら誘導の声も聞こえませんしね(^^)
催眠の入り方はショー催眠を行うような催眠術の掛け方よりも、セラピー系の催眠誘導の方がわかりやすいかもしれません。被験性がとても高い人は簡単な誘導ですぐに催眠に入っていきますし、ショー催眠でやるような指示的な暗示の与え方の方が一気に入りやすいと言う人もいます。そういうのが怖いという人などの場合でも、セラピー系の誘導では優しく誘導しますので、被験性テストや軽い後倒法などで、例えば体感として自動的に腕が動く感じ(自動感・他動感)などを味わえば催眠感覚もわかりやすいでしょう。



● 「催眠状態」とは  & 催眠にかかったらどうなる?

◎「催眠状態」とは
催眠状態になることを、「催眠に入る」とか「トランスに入る」などと言います。催眠状態はトランス状態とか催眠性トランスとも呼ばれます。「意識」と「無意識」のはざまの状態とも言えます。

催眠状態は変性意識状態の一種と考えられています。変性意識状態というのは、広い意味では誰でもいつも経験しています。テレビに熱中していて親に声をかけられたのに気づかない、とか。朝起きたばっかりで頭がボーッとしてるとき、眠りに入る手前、思考停止の恍惚状態など。 変性意識状態を極端に例えれば宗教体験などにも多くみられる現象で、英語でAltered States of Consciousness(略してASC)と 表記されたりもします。変性意識状態は文字通り意識が変容した状態で、通常の意識とは異なる、という定義もあります。催眠状態の定義にも色々あります。

禅の研究者の一人、恩田彰(東洋大学名誉教授)専攻分野=臨床心理学,他)は変性意識状態の特徴として「覚醒とも生理的・心理的に区別」される としています。また変性意識状態について「特殊な注意集中の状態・日常の意識とはちがった意識状態が現れ、心身の弛緩が生じる。 被暗示性が高まり、心の内面への感受性が強くなる。運動・記憶・思考・感情・行動などに変性が見られ、イメージが展開し、 想像力や直感力が促進する。また自律神経機能が変化し、心身のひずみが開放され、心身の安定がえられる」と述べています(最近では催眠状態についての新たな定義や考え方もありますが、催眠状態の本質が何かを追求するのは建設的でないという考え方もあり、それには納得せざるを得ません。また、催眠状態についての専門的な知識を得たい人は催眠医学心理学会の「催眠学研究」の論文などを国会図書館などで調べてください)。

詳しく書くと色々ありますが、このホームページでは簡単に、他者に催眠を掛けられたり、自己催眠で変性意識状態になったときを催眠状態ということにします。少なくともこのページではその方が建設的です(^^)。要するに、「色々と分析したりする理論的思考のレベル」が下がって、イメージや感じることの方が優勢になっている、そして普段のときよりも催眠暗示に反応し易い状態ということにします。
催眠状態と同様な心的状態にはフォーカシングや臨床動作法などによってもなり得ます。ですが、フォーカシングや臨床動作法と、催眠との違いは、前者は「実際の感覚」から「現実の反応」へ、ですが、催眠は「今実際にそうなっているわけでは無いこと(暗示の目指す状態など)」から「現実の反応へ」です。つまりフォーカシングや臨床動作法はいわば「実」から「実」へですが、催眠は「虚」から「実」へ、と言えます。
催眠状態では、顔の筋肉の平坦化、呼吸の安定、視線の停止、体温の上昇、思考反応の遅れ、指などの少しの自動的な痙攣、などが見られ、暗示に反応しやすくなります。色々考える理性の水準が下がり、例えて言うなら、無意識/潜在意識への扉が通常よりも大きく開かれます。
催眠状態にも浅い催眠状態から深〜い催眠状態があります。


◎催眠にかかったらどうなるの?
催眠に入ると、心(意識)が「暗示」を受け入れ易くなります。「暗示」の言葉が意識の深くへ入り易くなるワケです。これを被暗示性が高まるともいいます。煩わしいことを色々考えなくても良い、とってもリラックスした、いい気分の状態にもなります。催眠暗示の反応を自分で楽しむこともできます。
「暗示」と言っても色々ですが、言葉や合図(指を鳴らすなど)などによるその人の心の底へのイメージの喚起のようなもの等です。TVのショー的に解りやすく言うと、催眠術師が『3つ数えるとあなたは全身から力が抜けて椅子から立ち上がれなくなります』という暗示の言葉がそのままのとおりになるわけです。それでショーでは操られているように見えるワケです。ですが、本人は強制されてやっているわけではなく、又これらは心身に危険が及んでいるわけではありませんし、催眠に入っている人は意外にそれを楽しんでいたりもします。そんなとき、そんな催眠に入っている人にとっては不思議で楽しい感覚が味わえ、正にエンターテイメントだったりもするわけです。他の人はそれを見て笑っていたりしますが、催眠に掛かっている人にとっては愉快で楽しく、不思議で感動的な感覚でもあります。
催眠状態で誘導されているときは本人は眠ってはいません。 施術者の声もちゃんと聞こえてるし、失神しているわけでもありません。「催眠を掛けて人を思い通りに操る・ヒミツを全部聞き出す」ということは普通一般の人に対してはできません(「操られたがり」の人なら別ですが(^^; 。できるならとっくに警察が凶悪犯罪者の自白にでも使っているでしょう)。

催眠に入ったときの状態は人それぞれです。どんな暗示に反応しやすいかも人それぞれです。「手がかたまる」(カタレプシーの一種)という暗示から一気に深い催眠状態(トランス)に入っていく人や、「手がかたまる」という暗示にはあまり明確に反応しないが「幻覚」暗示がよく入る人、どんな暗示でも良く反応する人、トランスに入るまでは時間がかかるけど一旦入ると深く入る人、すぐにトランスに深く入る人、などなど。「好き」だとかの「感情」の暗示、「水がウーロン茶の味になる」というような味覚の暗示、色んな暗示があります。そして、トランスへの入り方にも人それぞれの個性があります。催眠状態に入ったことがない人の場合、トランスに関するイメージも人それぞれで、例えばある人はトランスを体験した後で、「一番驚いたのは、ちゃんと声が聞こえてたんですよ!」ということだったりします(声は聞こえています。声は聞こえてたのは覚えているけど、どんなことを言っていたのかその内容はおぼろげながらにしか覚えていないという場合ももちろんあります:催眠状態にあるときはちゃんと聞こえていますので、たいていかなりいい気分で入っていたときです)。

催眠中に身体を弛緩させておくと、人によって時に一時的に“ブルッ”と震えることはありますが、これは簡単に言うと、ストレスが発散されている現象の1つ、と見られています。広い意味でカタルシスとも言ったりもします(若い頃スポーツをして大変疲れてうたた寝してるときなどに一時的に腕や身体が“ブルッ”と震えた経験を持つ人は多いと思いますが、そんな程度の震えです。本人はいい気分です)。

催眠に入ると、とっても気持ちがいいもので、また掛けてもらいたくなったりもします。特に女性の場合や疲れている方の場合、リラックス感や気持ちよさは最高だと言います(というより誰でも気持ちいいですが)。催眠の入り方を知ると、ちょっとの誘導で自分で深〜く入っていけるようにもなります。自己催眠を習得しようとする場合にも他者に掛けてもらって催眠に入った状態を味わうのはとても有効です。催眠状態に入ることを経験するとそれを覚えられます。
催眠で心の肩もみをしてもらってるような気分を味わうこともできます。



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